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第9回「地域企業論」を開講しました

 2026年度前期科目として開講している「地域企業論」では、西京区内を中心に、地域に根差した経営を行っている多種多様な企業群の経営者・責任者の方々をお招きし、地域企業と地域社会の関わり、産業特性、経営上の工夫などについて、実務に基づいた講義をしていただいております。本講義は、学生たちにとって貴重な実学の学びの機会となっております。

 2026年6月17日、第9回目の地域企業論のゲスト講師として、洛西紙工株式会社取締役・小田智英氏にお越しいただきました。洛西紙工株式会社は、ダンボールケースの製造販売業、各種紙器・荷造り梱包資材の販売業を営まれています。ダンボールが世間一般に普及し始めたのは意外にも戦後のことで、時代の潮流に乗り、小田氏のご祖父さまが1960年に洛西紙工を創業されました。
 小田氏は栃木県に生まれ、大学を卒業後、大手企業の営業職に就かれ、順風満帆な社会人生活を過ごしておられましたが、2020年に突然、ご祖父さまが創業された洛西紙工を継いでほしいとの連絡を受けました。小田氏は突然の申し出に困惑され、事業を引き継ぐかどうかとても悩まれたそうですが、ご祖父さまへの感謝と責任感から後を継ぐ決意を固められました。全くと言っていいほどの見知らぬ土地で、経営者としてのキャリアをスタートさせた小田氏ですが、当初は、販路や設計知識、製造ノウハウがない状態であり、関連企業の知り合いもいない中、事業を展開していく苦労を大いに味わったそうです。
 続いて小田氏はダンボールの社会的価値についてご説明くださいました。現在、運送業や日常生活での物の持ち運びに欠かせないダンボールですが、その資材の再利用・リサイクル率は95%を誇り、環境問題の悪化が懸念されて久しい現代社会において、極めて優れた循環資材として注目を集めています。ダンボールは、暮らしや物流に必要不可欠なものなのですが、日常的に存在していて当たり前という世間の認識の影響によって、その社会的価値が見えにくいというジレンマを抱えています。
 事業を承継するにあたって小田氏は、自社がなくなると誰が困るのかという問いを自問自答し、会社の存在意義の再定義を行いました。ダンボール箱は基本的にはどこでも同じものを作ることが可能であり、差別化がしにくく、価格競争に陥りやすいという問題を抱えています。洛西紙工は地域企業ならではの、小ロット生産・即納対応を可能にする柔軟性とスピードという強みを有していますが、一般的に段ボール業界は大量生産を前提とした装置産業として位置づけられています。効率性という観点では、どうしても大手企業に後れを取ってしまいます。そこで小田氏は、自社のダンボール製造技術を活用した、社会課題の解決活動という新規事業を立ち上げます。小田氏は、ダンボールの用途をケースだけに限定するのではなく、アート、空間づくり、防災、福祉、さらにはこれらの活動のワークショップを通じた人材育成など、非常に広範な領域にわたって、自社の存在意義を見いだしたのです。小田氏は、小学校、高校、芸術系大学等々の教育現場において、彼らの発想を取り入れた製品開発、若い世代との共創活動を行われています。これらの新規事業活動は、ビジネスや収益と社会貢献は決して相反するものではなく、両立が可能であること示しています。また、地域社会との連携事業は、模倣が極めて困難なビジネスモデルであり、地域企業独自の競争優位を兼ね備えています。
 最後に小田氏は、経営者の目線から、学生たちに働くということに対するメッセージを語ってくださいました。小田氏は、何のために働いているのかという問いに対し、社会に役立っているという実感を持つことが出来れば、仕事への非常に大きなモチベーションとなることを伝えてくださいました。小田氏自身が、このメッセージを具体的に体現されています。
 学生たちは、ダンボールという極めて日常的で身近な製品が、事業ドメインの再定義ならびに企業家の発想次第で様々な方向に発展していくという製品ポテンシャルに関する多大なる学びを得ることができました。加えて、地域社会への貢献活動には、多種多様なビジネスチャンスが潜在しているという気づきも同時に得ることが出来ました。

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