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第12回 地域企業論を開講しました

 2026年度前期科目として開講している「地域企業論」では、西京区内を中心に、地域に根差した経営を行っている多種多様な企業群の経営者・責任者の方々をお招きし、地域企業と地域社会の関わり、産業特性、経営上の工夫などについて、実務に基づいた講義をしていただいております。本講義は、学生たちにとって貴重な実学の学びの機会となっております。

 2026年7月8日、第12回目の地域企業論のゲスト講師として、株式会社全笑(ゼンショウ)代表取締役・平野仁智氏にお越しいただきました。全笑は、香辛料の加工卸を中心に、香辛料の輸出入、小売店舗運営、障がい福祉、飲食店、宿泊施設等々といった幅広い事業を営まれています。また、本社を西京区大枝塚原町に置き、京都府各所、和歌山県、鹿児島県、ミャンマーといった多様な地域に複数の事業所・工場・店舗を構えておられます。

 平野氏は自由奔放な学生生活を送られたのち、明暦年間(1655年)に創業された七味等の香辛料を取り扱う親戚の老舗企業に就職をしました。そこでは、原材料調達・製造管理責任者、取締役などを歴任されるのですが、仕事を続けていくうえで様々なストレスに見舞われ、今一つやりがいを見いだせず、独立を決意されます。

 独立のきっかけとなったのは、和歌山県の山椒農家の方々との出会いでした。和歌山県は全国の山椒生産量の約60%を誇る一大生産地ですが、平野氏は、多くの農家が大手企業に買いたたかれている現状を目の当たりにし、農家の方々に適切な対価が与えられなければならない、農業を守りたいという強い思いから、全笑を2009年に設立されました。

 全笑の経営は、最初から順風満帆だったわけではありません。加工工場の生産性を上げるための従業員管理に日々悪戦苦闘し、東日本大震災の影響による出荷の大量キャンセルなどによって、多額の損失を出してしまいました。しかしながら平野氏は、いくつかの失敗から多くの気づきを得ることになったそうです。他地域で生産された山椒との違い・独自性を打ち出せなかったことが、地域の特産品としての価値創造に至らなかった原因であり、顧客への訴求力を欠いた状態で価格競争・数量勝負に陥った結果が、多額の損失につながったという教訓を得られたそうです。また、関係性の浅い取引先ほど、真っ先に去っていった経験から、人間関係における信頼関係を醸成する大切さも学ばれたそうです。そして、生産者と企業、パートナーを掛け合わせることで新たな価値が創造され、地域に持続性をもたらすという考えに至るようになったとのことでした。平野氏は、連携活動によって、地域は単なる物理的な「場所」ではなく、「価値」となるとお話しくださいました。上記の経験から得られたこれらの考え方は、全笑の経営の原動力となり、その後の躍進をもたらします。

 まず和歌山においては、地域の生産組合・JA・県農と連携し、山椒の単価を15年で4倍に向上させ、販路も大幅に拡大しました。これは、地域の価値を理解し、信頼関係を築きながら、継続的な取り組みを行った結果に他なりません。続いて、白胡麻の一大生産地と知られる喜界島においても、同様の経営理念に基づく取り組みによって、生産者と企業に収益をもたらしました。そして、ミャンマーにおけるNGOとの連携、日本を代表する仏教の聖地である高野山での小売業、行政と農福連携による就労継続支援等々、それぞれの地域の課題解決とともに、それぞれの地域の価値を高める事業の成功を次々と収めてこられました。さらには、美食大国フランスにおいて、日本食を広め、日本という地域の価値を浸透させる事業にもチャレンジされています。最後に平野氏は、「縁尋帰妙」(えんじんきみょう)という言葉を用い、人生の節目節目で出会い、自身を協力者・支援者として支え続けてくれた人たちへの感謝を述べられました。

 学生たちは、平野氏の地域企業家としての傑出したバイタリティ・エネルギーに圧倒されました。経営難を乗り越え、新しい事業に挑戦し続ける平野氏の姿勢は、地域の価値を創造・具現化するためには、過去の失敗から学ぶこと、情熱と行動力が必要であることを示してくださいました。加えて平野氏は、人との出会い・縁、信頼関係、社会ネットワークの厚みは、地域企業にとってかけがえのない経営資源であることを教えてくださいました。

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