INFORMATION

2019年度入学式 式辞

入学式 式辞

 桜も咲き始めた古都の春を迎えた今日、京都経済短期大学の二〇一九年度の入学式を挙行できることをうれしく思います。
 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
 新入生の保護者・保証人のみなさま、おめでとうございます。
 ご来賓のみなさま、ご多用のところ多数ご臨席をたまわり、厚くお礼を申し上げます。

 京都経済短期大学は、一九九三年に開学いたしました。今年で二十七年目となります。入学定員二〇〇名のところ、二五九名の新入生を迎えられることをうれしく思います。私たち教職員一同は、新入生のみなさんと出会えたご縁に感謝しています。

 さて、京都経済短期大学は、日本の短期大学の中で「経済」という名称がついている唯一の短期大学です。また、二〇一八年度では、短期大学の定員割れが七〇.四%となっているなかで、多くの学生を迎え入れることができています。

 短期大学は、四年制大学と比較すると学びの期間が二年間と短く、得られる知識やスキルの量も中途半端なのではないかというイメージがあり、専門学校と比較すると就職に弱いというイメージがあるように思います。このような状況で私たちの短期大学が打ち出したのは「二年で四年の学び」「進路に強い短大」です。
 ここで重要なのは、「弱みを強みに変える」ということです。

 松下電器産業、現在のパナソニックを創業し、「経営の神様」とも呼ばれる松下幸之助さん。彼は財産家の家に生まれましたが、父親がお米の先物取引で失敗して破産。幸之助さんは小学校を四年で中退しなければならなくなり、いきなり貧困のため、一家離散となりました。丁稚奉公でなんとか暮らしていくも、兄弟は次々に結核で死亡し、自身も結核の初期段階にかかり、生涯病弱な人生を送りました。そんな体でしたから性格的にも弱いものがありました。

 そんな松下さんが成功した理由を聞かれたとき、「そんなことは聞かれても、あれへんわけや。けどな、しいて言えば、わしが凡人やったからやろうな。人と比べて誇れるようなものはない。それがよかったと思う。」と発言しています。また、小学校を中退したことについても「幸いにして学校へ行ってないから、人に尋ねる以外にないということになるわな。それで経営も商売も、人に尋ねながらやってきた。それがうまくいったんやな。」と発言しています。

 もちろん松下幸之助さんは電灯用ソケットや自転車用電池ランプなどさまざまな発明品を出しましたが、弱みを強みに変える力があったことが松下さんの成功につながったと言えます。

 「弱みを強みに変える」ためにはどうすればいいのでしょうか。これには二つあります。まず自分の弱さをきちんと認識し、それを隠さないことです。弱さを隠そうとすると、自分にウソをついたり、無理をしなければならなくなります。もう一つは日々、一歩一歩努力を積み重ねていくことです。日々の小さな努力の積み重ねが平凡を非凡に変え、弱さを強さに変えてくれるでしょう。

 大学での学びとは何なのか。例えば、「自分の弱みを強みに変える」ということではないでしょうか。自分の弱さをきちんと認識し、自分にウソをつかない。そして日々努力する。これならば二年間でも十分身につけられることでしょうし、このことは一生涯応用が利くスキルになるでしょう。これは「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助さんの教えなのです。本学で扱う経営学では、このように一生役に立ついくつかのことを二年間という短期間で学んでいってほしいと思っています。

 「進路に強い大学」。これは、学生の多様な卒業後の進路にきちんと向き合い、確実に送り出す大学ということです。一言で就職といっても、短大枠での就職と四大生と互角に競争する就職がありますし、職種では、事務職、営業職、総合職とあります。会社も規模や社風などさまざまです。編入についても、国公立の一般編入と協定校編入では、準備することは違いますし、編入先が経済系なのか経営系なのかでも異なります。小さい短期大学だからこそ、学生一人ひとりの方向性にきちんと向き合うことができると考えています。

 ここで入学するみなさんにお願いしたいことを一つだけあげるとすれば、ポジティブでいてほしいということです。どんな人でも、レベルは一人ひとり違っても、悩みや劣等感を持っています。そういったことに悲観的にならず、毎日を楽しんでください。つらいときに明るく振る舞うことは、とても力のいることです。しかし、つらいときこそ明るく振る舞うことができるようになれば、まわりの人が必ず助けてくれるでしょう。

 京都経済短期大学を経営する学校法人明徳学園のミッションは、「働く人づくり」をもじって「『傍』を『楽』にするひとづくり」です。人を助け、人に助けられるような社会を構築することに貢献できる人材を育成することを目指しています。自分自身のよい行動やよい考え方によって、自分のまわりの人たちの行動や考え方もよくなっていく。そのことで自分自身もさらに成長していく。利他主義によってよい社会をつくっていくことが、本学の使命だと考えています。

 最後になりましたが、新入生のみなさんが、この京都経済短期大学で過ごす二年間という時間を大切にしてください。そして、みなさんのその大切な時間を、私たち教職員も一緒に共有できることに深く感謝して、入学式の式辞といたします。

二〇一九年四月一日

京都経済短期大学
学長  加藤 悟