INFORMATION

2017年度 卒業式 式辞

卒業式 式辞

 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
 卒業生の、保護者・保証人のみなさま、おめでとうございます。
 ご来賓のみなさま、ご多端のところご臨席をたまわり、厚くお礼を申し上げます。
 卒業生のみなさんが、京都経済短期大学に入学してから、いくつもの苦難を乗り越えつつ、日々学修に励み、本日の卒業まで見事にたどり着いたことに、私たち教職員一同は、みなさんに敬意を表しますとともに、感謝いたします。

 ここ数年で京都経済短期大学は大きな変化を遂げています。入学志願者が急増し、入学を希望しても入学できない受験者が増えています。そのような短期大学を卒業したのですから、前を向いて、胸を張って、これからさまざまな場で大活躍されることを期待しています。

 さて、現在、朝日新聞で連載されている鷲田清一さんの折々のことばで紹介されている中に、「魚釣りは、何月何日から何の魚を釣ると決めておかずに、季節の草花によって魚を釣る」というものがありました。ここに登場するのは、魚を釣る人間と、その魚と、季節の草花の三つです。季節の移り変わりを一番早く感じ取っているのは、人間でも魚でもなく、草花なのです。

 春を告げる花の一つにツバキがあります。漢字で書くと、まさに木へんに春と書く花です。万葉集にも登場する花で、京都の龍安寺には室町時代のツバキも残っているそうです。日本では、まだ寒いさなかにツバキが咲き、その後ウメ、サクラと続いて、暖かな季節が到来します。

 さきほど示した言葉は、季節の移り変わりをいち早く知らせてくれるのは、人間でも魚や鳥や虫でもなく、草花だということを示しています。いろいろな花が咲き始めてから、魚や鳥や虫たちが動き出します。そのあと、人間が釣りや狩りをはじめるという順番です。
 社会の動きも、これに似たようなものがあります。まず社会の変化のきっかけを作る人たちです。次に、これらのわずかな変化を見逃さず、その変化を拡大させる人たちです。それから、変化しつつある社会に適応していく大多数の人たちです。
 インターネットを例にあげると、ある種のオタクのパソコン通信から始まり、ウィンドウズ95が発売されて、急速に広まり、現在は社会インフラの一つとなっています。
 みなさんが、季節の草花タイプなのか、魚タイプなのか、釣り人タイプなのか分かりませんし、どれがいいとか悪いとか言うつもりもありません。みなさんに伝えたいのは、変化する時代の中で、いろんなタイプの人がいて、それぞれ役割を果たしながら、社会全体が成り立っているということを理解してほしいということです。

 すべての人が、他の人にはない自分の特徴を理解し、それを存分に発揮し、それを互いに認め合い、感謝することで、社会全体が成り立っていることを理解してほしいのです。
 残念なことに、現在も世界各地で紛争が発生し、人間同士の殺し合いが行われ、自然環境や野生生物が損なわれ、未来に残すべき資産を先食いしています。
 そこに欠けているのは、「気づき」と「他者への感謝」だと思います。この「気づき」と「感謝」をいつまでも忘れずにいてほしいと思います。

 最後になりましたが、本日からみなさんは京都経済短期大学の卒業生の一人となります。卒業で縁が切れるわけではありません。是非今後もこの短期大学に遊びに来て、いろいろな話を聞かせてください。私たち教職員にとっては、教え子のその後の姿を見るのが何よりの幸せなのです。
 卒業生のみなさんの前途に幸多かれと心から祈り、そして感謝し、卒業式の式辞といたします。

2018年3月15日
京都経済短期大学 学長
加藤 悟